SEGA

ソニックチャンネル

連載サウンドコラム

ソニックチームのサウンドディレクター瀬上 純と大谷 智哉によるコラムコーナー。

『ソニック ランナーズ』サントラ Vol.2 全曲解説!

みなさんこんにちは、「ソニック」シリーズ サウンドディレクターの大谷です。

2016年、早くも12分の1が終了目前です。
さて今回は、昨年12/25に配信リリースされました。

Sonic Runners Original Soundtrack Vol.2

こちらのサントラを聴きながら読んでもらって楽しめるような、全曲解説を書いてみたいと思います!

1. Going My Way

アプリのサービス開始時から実装されている、無敵アイテム使用時の曲です。実はサントラ収録希望の声が多かった隠れ人気曲なのです。言ってしまえば『ソニック ランナーズ』(以下、ランナーズ)のテーマ曲「Beyond The Speed Of...」のリミックスなのですが、その制作工程はと言うと、「Beyond The Speed Of...」のドラムパートだけを抜いたステムミックスを用意して、破綻しない程度のいい感じのところまでピッチを上げます。(半音5つ分)そのピッチシフトされたトラックに新たな4つ打ちのリズムトラックを足しただけの簡単なお仕事(リミックス)です。「Beyond The Speed Of...」がBPM200なのですが、ピッチシフトでBPM270まであがっているので、その半分のBPM135のリズムを合わせています。昨年6月に開催された「ソニック バースデーパーティー2015」でランナーズの楽曲でライブをやることになり、この無敵の曲を出囃子的に使うことにしたのですが、そのまま再生してフェードアウト、あるいはカットアウトでは面白くない......。ということで、曲の構成を編集したり、ヒット音や上昇音などのSEなどを追加したりフィルターエフェクトのオートメーションを書いたりして、高揚感を煽るような構成を作ったのですが、そのバージョンをサントラに収録しました。曲名は「Beyond The Speed Of... Remix」とか「Re-Edit Ver.」とかでも良かったのですが、それも普通なので、あえてオリジナルの曲名をつけてしまえ!ということで考えたタイトルが「Going My Way」です。なんと言っても無敵ですから......。

2. Go Quickly! 

バージョン2.0から実装された「クイックモード」のステージ曲です。基本的にはテンポの速い曲ばかりではありますが、この曲は出だしから全速力で駆け抜けて行くようなイメージです。ランナーズの曲らしく明るく楽しい感じはありつつも、タイムリミットが迫ってくる緊張感も併せ持つ曲にしたいと思いました。デモの最初のバージョンでは、ドラムが全体的に8ビートだったのですが、ディレクターからもっと急ぐ感じが欲しいとの要望があり、Aメロとサビを今のリズムパターンに変更しました。土台となるリズムパターンが変われば、曲のノリも大きくわります。サビが6小節でひと塊なのも、急ぐ感じを出す為の工夫の1つです。他の曲にはない要素としてはギターソロです。「Spring Emotions」のアコーディオンソロ以来のソロコーナーなのですが、2コーラスが終わり、そこから最後の転調サビに辿り着くまでの道のりを、西川進さんのギターソロで盛り上げてもらうおう的な魂胆です。ゲーム中に実装されているのはショート版なのですが、サントラの方がフルコーラス版になります。

3. Fiery Passion

7月に開催されたスペシャルステージイベント「デザートルーインズ」のステージ曲になります。砂漠面というと『ソニックと秘密のリング』や『ソニック ロストワールド』などでも、アラビア音階などを取り入れた創作音楽として作られることも多いのですが、ランナーズでは、同じモチーフ(この場合は、砂漠)であっても過去シリーズと同じようなアプローチでは作らないという裏テーマを設けていまして、わりと自由に音楽としてのかっこよさを追求しつつも、ステージに合う曲調を模索していきました。もう1つ、例えば『ソニック ロストワールド』のステージ曲では、楽器構成に縛りを設けず、様々な楽器のサウンドを自由に取り入れてバリエーションをもたせていたのですが、ランナーズの楽曲は1つのバンドがアルバムを作るようなイメージで、曲ごとの特色を出せるような作曲をしていきました。この曲の場合、サウンド的にはスラップベース、7thコードのカッティング、オルガンなどをポイントに、イントロやサビの「前に進むぜー!」的なメロディで暑さ(=熱さ)を表現してみました。灼熱の砂漠の暑さと、気持ち的な熱さ(情熱)をかけて、「Fiery Passion」という曲名をつけました。パート数的にはシンプルなバンド編成ですが、それぞれのパートが自己主張し合うことで、派手な印象を与えられるような曲を作りたいと思っていたので、ちょっと近づけたかなと思っています。

4. End Of The Summer

8月に開催されたスペシャルステージイベント「真夏のトロピカルコースト」の曲です。青い空、白い雲!海!開放感!ヒャッハー!的な元気いっぱい弾けるような曲をイメージされたかもしれませんが、前の曲でも書いた通り、違うアプローチをトライしてみる!という裏テーマがありますので、夏の曲ではありますが、やや感傷的な曲に仕上げてみました。先日とある音楽番組で某音楽プロデューサーの方が、「日本人は“切ない”が前に進んでいく感じが大好き」とおっしゃっていたのですが、(僕も好きですが)この曲はわりとそんな感じかもしれません。たった1週間の期間限定イベントって切ないですよね。残り少ない夏を惜しみつつ、悔いを残さないよう最後まで走り抜ける!そんな曲だと思います。イベントタイトルは「真夏の...」ですが、8月の終わりに開催されたので曲的にはばっちりなタイミングでした(笑)。季節感や、季節ごとのイベントを題材にした曲を作れるのは運営タイトルの醍醐味です。2分56秒からのピアノとヴァイオリンだけの静かな構成や、その後のリズムを止めるブレイクなどもポップスでは常套手段ですが、ゲーム中のBGMではあまりやらないかもしれません。そういった要素も感傷的でドラマチックな演出のために積極的に取り入れていきました。リズム隊以外にはヴァイオリンとヴィオラを収録しています。ストリングスはいろんな表情を作れるし、スピード感も出せるし、バンドサウンドとの相性がとてもいいです。これまで「His Wolrd」、「Rooftop Run - Day」、「Rooftop Run _ Act 1 / Act 2」「Windy Hill - Zone1」などなど、ストリングスの入る曲はたくさん作って来ましたが、バンド × ストリングスという方向性で、また少し完成度を上げることが出来たかなと思っています。

5. Strange Parade

10月に開催されたスペシャルステージイベント「ハロウィンの夜」のステージ曲になります。ハロウィンと言うと大きなカボチャで作られたジャック・オー・ランタンやお化けをイメージしますので、『ソニックアドベンチャー2』の「Pumpkin Hill」の曲(「A Ghost's Pumpkin Soup」)や、『ソニック ヒーローズ』の「Hang Castle」(「Stage 11 : Hang Castle」)の曲では、まさにそんなイメージのオドロオドロしい曲を作ってきたのですが、その感じだと気持ち良く走り続けたいランゲームには合わない......オドロオドロしくも爽快?うーん......しばし悩んだ結果。ハロウィン仮装パレード的なイメージのダンサブルな曲で行くことにしました。日本的なハロウィンの解釈かもしれませんね。お菓子も出てくるので、ファンシーな要素や、キラキラしたファンタジックな感じも出したい......と考えていってシンセサイザーのサウンドを主体に作ってみることにしました。ランナーズの曲は8割がた生楽器の演奏を収録しているので、打ち込みメインの曲はほぼないのです。そういう点で新鮮さも出せるかなと思いました。とはいえ、ランナーズの曲になっているのは(なっていますかね?)、他の曲と同様、ポップス的な構成になっているのと、シンセ主体とはいえエレキギターとエレキベースを入れているからかもしれません。

6. Magical Snow Day

クリスマスのレコードコレクション

12月に開催されたクリスマス専用ステージの曲です。「Magical Snow Day」という曲名からもわかる通り、クリスマスに限定した曲ではなく冬全般、雪をモチーフにした曲になります。わたくし、個人的にクリスマスもののレコードを収集する癖がありまして、それが役に立ったのかはわかりませんが、大好きなクリスマスシーズンの音楽を作れるのは願ったり叶ったりでした。


ソニックが雪原を走り抜けるような疾走感はありつつも、雪化粧のファンタジックな感じや、ほっこり感もある、そんな曲にしたいと思いました。ランナーズのステージ曲は構成多く、尺も長めに作っているのですが、この曲は最も構成が多く長い曲になっています。イベント用の曲を作りつづけるうちにどんどん豪華になってしまっているのかもしれません......。インスト曲はメロディをなんの楽器に担当させるかが悩みどころなのですが、強いサウンドでいきたいところはギターに担当してもらうとして、ほっこり担当はクラリネットにするかオーボエにするかソプラノサックスにするか悩み、この曲はクラリネットで収録しました。雪をモチーフにしたステージの曲と言えば、『ソニック ロストワールド』の「Snowball Waltz」も、ステージ曲としては珍しい優しい曲なので聞いてみて欲しいです。『ソニック ワールドアドベンチャー』では、熊谷文恵さんの作の「Holoska - Day / Holoska - Night」氷と雪の村を表現したとてもいい曲です。他にたくさんあると思いますが、雪面プレイリストが作れそうですね。

7. Ambition

バージョン2.0用のトップメニューの曲になります。これまでのメニュー曲と併用されることから、自然に繋がるように同じテンポ、同じキーで作りました。アプリがバージョンアップしたことで、より大きな志をもって、日々記録に挑戦していけるようなイメージで制作していたので、曲名も「Ambition」と名付けました。ステージ曲はイメージが固まれば勢いで作れてしまいますが、メニュー画面の曲となると、熱すぎず冷たすぎず、お風呂のお湯の温度に例えるなら......ではなく、ワクワクする感じはあるけど、ある程度はニュートラルな感じも必要だと思っていたので、そのさじ加減が難しかったです。余談ですが、1分4秒あたりからのスネアロールの感じが好きなんです。勝負の前にじわじわと気持ちをアゲていくような感じがするんですよね。『ソニック カラーズ』の「Reach For The Stars」のイントロのスネアロールはその高速バージョンです。

まとめ

というわけで、全7曲の解説を書いてみました。
スペシャルステージイベントの曲は、追加で配信される1曲1曲がフォーカスされることになるので、その重みをひしひしと感じながら、それに耐えうる曲を作りたいと思い取り組んでいました。1、2年かけて制作する大作では、楽曲が完成してから世に出るまで長い期間がありますが、ランナーズの曲はつい先日仕上げたばかりの曲が配信されていくような制作スパンなので、とっても新鮮です。今の旬を出して行くこともできますし、遊んでくれている方の反応をみつつ次の曲のアイデアを考えたり、初期の曲を作った時のノウハウを後から作る曲に取り入れることが出来るのも運営タイトルならではの面白い点だと思っています。基本無料のゲームではありますが、プロデューサーがレコーディングするための予算もちゃんと確保してくれていたので、いつも通りのプロセスで1曲1曲、工程に時間をかけて仕上げています。「ソニック」シリーズ最新の音楽として良いものに仕上がっていると思いますので、ゲームを遊んでくれている方はもちろん、ゲームを遊んだことのない方も普段聴きで楽しんでもらえたら嬉しいです。Vol.1と合わせて『ソニック ランナーズ』のサウンドトラックをよろしくお願いします!

ではまた!


→ソニック ランナーズ オリジナルサウンドトラックVol.1
→ソニック ランナーズ オリジナルサウンドトラックVol.2