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ソニックチャンネル

連載サウンドコラム

ソニックチームのサウンドディレクター瀬上 純と大谷 智哉によるコラムコーナー。

『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』(2006)10周年 / 『君の名は。』

みなさんこんにちは、「ソニック」シリーズサウンドディレクターの大谷です。

2016年、最後のサウンドコラムになります。今年は『ソニック ランナーズ』サントラの全曲解説に始まり、リズムトラック制作にまつわるお話「リズムトラックメイキング」。「Game Symphony Japan」コンサートレポート。特別企画となる『マリオ&ソニック AT リオオリンピック™』のサウンドインタビューでは、全6回と通常の更新予定よりも多くの記事を用意することになり ました。そして『ソニック トゥーン ファイアー&アイス』の中島ディレクターとの対談記事では、ゲームに関心を持ってもらえるきっかけを作れたらと思いながらまとめました。

ソニック25周年なので、本当は過去作の振り返りをもっと書くつもりだったのですが、その時々のトピックを書いているうちにあっという間に12月になってしまい、4月のこちらの回のみとなりました......。

ということで最後に1作品、ソニック15周年の年に発売され、今年発売10周年を迎えた『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』(2006) のことを軽く振り返ってみたいと思います。

10周年!?

早いものであれから10年、初めてサウンドディレクターを担当した作品ということもあり、当時の事は鮮明に覚えています。

次世代機のグラフィック表現がどこまで進化するのかワクワクしながら開発する一方で、それに見合うだけのサウンドを作ることが出来るのか、かなりプレッシャーを感じながら制作していました。サウンドに関してもハードの制約も徐々に少なくなる中で、これからの「ソニック」シリーズのサウンドデザインがどうあるべきか、大きなテーマからも考えていきました。

まだゲーム内に音楽や効果音が実装される前の開発初期、ゲーム画面を動画ファイルとしてキャプチャーし、どのような音の演出が効果的か、動画に音をはりながらサウンドデザインを検証し、サウンドチームが考える理想型を先に作っておき、それを目標として共有しながら制作を進めていきました。サウンドだけで実現できることや、プログラムを用意してもらわなければならないものなど、その時に考えた「理想」=「やりたい事」の全てがすぐに実現出来たわけではなかったのですが、その後に制作する『ソニック ワールドアドベンチャー』などにも継承されていきます。

古城面と呼ばれていた「KINGDOM VALLEY」、災害都市面と呼ばれていた「CRISIS CITY」のステージが徐々に出来上がり、私はまず始めに 「CRISIS CITY」の曲を担当することになりました。今でこそおなじみの、オーケストラヒットから始まるあの曲ですが、これがなかなかに苦戦を強いられることになりました。

シリアス、大作感、重厚感などのキーワードから、ハリウッド映画の劇伴のような、ミディアムテンポで重たい雰囲気の曲を提案していたのですが、その方向性で中村ディレクターからOKをもらうことが出来ませんでした。ディレクターの考えは、そのような曲はカットシーンで使って、アクションステージの音楽は、アクションを盛り上げる方向に振り切って欲しいというものでした。私としては、アクションステージの曲にもステージによりメリハリや、バリエーションの振れ幅を大きくしたいと考えていたのですが、ゲーム全体のシーケンスで考えれば、アクションステージとカットシーンで、すでにメリハリがあるので、それぞれの役割を明確にした音楽の演出をしていくという方針で、いまの曲に落ち着きました。

メインテーマも難航しました。(難航した話ばかりかよっ!)「HIS WORLD」の前に作っていた、メインテーマの第1案がありました。ドラムンベース系のビートに断片的なストリングスのフレーズ、ラップ、ソウルフルなコーラスワークなど、UK的?なアプローチでスピード感があって洗練された印象を打ち出したかったのですが、大作感を感じられるか?という点で、残念ながらボツになってしまったのです。(聴かせられなくてすいません)久しぶりにそのデモを聴き返したら、なかなか悪くなかったので、いつかちゃんと仕上げて世に送り出してあげたいと思いました。

その第1案がボツになり、メインテーマを再考したことで「HIS WORLD」の原型が生まれました。イントロのストリングスパートはHip Hopのフレーズサンプリング的なイメージで作り、そのフレーズをループさせながらラップが入り、バンドサウンドが入っていくみたいな着想でした。

逆に、さくっと決まったのがシルバーのテーマ「DREAMS OF AN ABSOLUTION」です。

超能力使い、未来人などのキーワードから、テクノハウス系のサウンドとAuto-Tuneエフェクトのかかったヴォーカルなど、とてもわかりやすい方向性ですが、それが伝わりやすかったのだと思います。さくっとできて、人気もあるのだから優等生ですね。

『ソニック・ザ・ヘッジホッグ』(2006)のエピソードを振り返ると、どうも難航した話が先に出てきてしまうのですが、よくよく考えてみると、この作品を手がけるまで、シリアス、大作感、重厚感といったテーマとそれほど向かいあったことがなかったかもしれません。そう考えると、手がけたことのないテーマに挑むことが、自分自身を成長させてくれるのではないかと思ったりするわけです。なので、難しいお題ウェルカムです(本当か)。

10年前に作った曲なので、今だったらもっと良く仕上げられるのに!と思う部分もあるのですが、その気持ちは、今後の作品に注いでいきたいと思います。

 

映画「君の名は。」

ここからは趣味のコーナーです。2016年は日本映画が盛り上がりましたね!「シン・ゴジラ」に「君の名は。」どちらも2回、観に行ってしまいました(テヘ
女の子と入れ変わってみたいですね〜。って違います。そんな話がしたいわけではありません。

前前前世 (movie ver.)

「君の名は。」は、僕が大好きなバンドRADWIMPSが音楽を担当しているということで観にいきました。ストーリーやアニメーション、登場人物など、どの要素も良かったですが、なにより音楽が重要な役割を担っている作品だと思いました。

往々にして、主題歌はアーティストのタイアップ、劇中のBGM(劇伴)は劇伴作曲家の方が担当というパターンが多いですが、「君の名は。」のサウンドトラックはその全てをRADWIMPSが手掛けることで、アーティストが手掛ける音楽の強さがありながら、シーンに追従する裏方的な側面も持ち合わせていて、より強力な演出が実現されていると感じました。

「スパークル」という挿入歌の1曲は、劇中で使用されているバージョンは9分もあるのですが、挿入歌として始まりながら、場面展開に合わせてインストゥルメンタルの劇伴になり、再び演出に合わせて挿入歌に戻るといった、進行により添った構成になっています。

スパークル (original ver.)

この曲が使われるシーンの高揚感が本当に素晴らしいです。すごくエモーショナルで強いメッセージを感じるのですが、演出のすべてがきっちりと計算されて作られている感じが心地よいのです。

映画は音楽、音響効果の使い方次第で、上映の体感時間を良い意味で短く感じさせることもできるし、悪い意味で長くも感じさせることにもなると言われています。「え、もう終わり?あっという間の‪2時間だった......」と思う作品は音の使い方が一役買っているのかもしれません。ゲームはプレイヤーに進行が委ねられているので、体感時間のコントロールという意味ではちょっと事情は異なりますが、映画やアニメの音の演出から参考になる部分はたくさんありますので、良いものは積極的に取り入れて、ゲームのサウンドをより良くしていきたいと思っています。

『ソニック ランナーズ』のサントラもよろしくです!

さて、今年もサウンドコラムをご覧頂きありがとうございました。今後もゲームサウンドの楽しみ方が増すような記事を書いていきたいと思っていますので、よろしくお願いいたします。

来年の「ソニック」シリーズにご期待下さい。

それでは、よいお年を☆