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ソニックチャンネル

連載サウンドコラム

ソニックチームのサウンドディレクター瀬上 純と大谷 智哉によるコラムコーナー。

『ソニックフォース』スペシャル対談(効果音編)

みなさんこんにちは、「ソニック」シリーズ サウンドディレクターの大谷です。

音楽の話題が中心になりがちのサウンドコラムではありますが、今回のサウンドコラムでは、『ソニックフォース』の効果音制作を取り上げてみたいと思います。アクションゲームとしてのプレイ感や、世界観の構築、キャラクターの印象づけなど、ゲームの演出において効果音はとても重要な要素です。どんな話が飛び出しますやら。


大谷:まずは、メンバーの紹介からいきたいと思います。ゲーム内の効果音全般、音声編集を担当しているセガサウンドチームの澤田 朋伯(さわだ とものり)さんです。

澤田:よろしくお願いします。

大谷:澤田さんと言えば、「ソニックライダーズ」シリーズなどでおなじみですね。続いて、カットシーンの効果音を担当しているSound Racerの中村 栄治(なかむら えいじ)さん、嶺川 千春(みねかわ ちはる)さんです。

中村嶺川:よろしくお願いします!

大谷:一言で「効果音」と言ってもいろいろあるので、まずは、ゲーム内の効果音から触れていきたいと思います。実際、1作品でどれくらいの音(数ないしカテゴリー)がありますかね?

澤田:ちょっと数は数えていないですが、キャラクターのアクション、ステージ内にあるオブジェクトやギミック、エネミー、その場の空間を表現する環境音など、色々なカテゴリーのものを制作します。さらにぱっと見の項目数よりも音の素材は多く作っていて、例えば同じ爆発でも、複数用意した爆発音の中からランダムに一つが鳴るようにして、連続で鳴っても不自然にならないような工夫もしていたりします。

大谷:具体的にはどうやって作っていくのでしょうか?

澤田:まず企画の人が仕様書というものをつくります。この仕様書にはそれぞれのオブジェクトやエネミーなどが、ゲームの中でどういう機能を持つのか、どのような動きをするかなどの情報が書かれています。それを見てデザイナーさんはデザインを制作し、プログラマーさんはゲーム内にそれらを実現するようプログラムを組んでいきます。

サウンドでもその仕様書を見て、どんな音が必要なのかを洗い出し、効果音のリストをまとめます。この時点で作れるものは作っておいたり、実際にゲームに組み込まれて動きなどのイメージが解るようになってから音を作っていったりもします。それらの素材をゲームの中で鳴らせる形にまとめてデータ化して、プログラマーさんに渡して再生してもらったり、こちらで3D空間内に音を配置したりしていきます。

実際にゲーム中で効果音が鳴るようになったら音量や、どのくらいの距離から聴こえるようにするか、同じ系統の音がどれだけの数聴こえるようにするのが良いのかなどの調整を行って、最終的な形に作り上げていきます。

大谷:以前に比べてたくさんの音を扱えるようになりましたよね。昔は、効果音データは○メガ以内とか、容量の制約がありましたが、現行機ではほぼ意識しないで作っている感じですか?

澤田:そうですね。最近は容量の制約もそうですし、同時発音数の制約もあまり意識しなくても問題なく音作りできる環境になっています。音質も落とさずに実装できるので、空気感とか細かなディテールの表現も、昔より格段にやりやすくなっています。

ファントムルビー

大谷:今回、作るのに苦労した音、こだわった点などについてききたいです。

澤田:一番特徴を求められたのはインフィニットの使うファントムルビーの音ですね。音を聴いただけで「あいつが来た!」と思わせられるようなものが欲しいと言われたので、試行錯誤して形にしていきました。

大谷:台本にも"印象的なSE"と書かれていましたね。

澤田:画面のエフェクトも赤いブロックが出たり、デジタルなノイズっぽい表現になっていたので、それに合うような不穏で邪悪な感じを出せるようやってみました。

隠れた要素として、「ソニックマニア」にもこのファントムルビーのSEがチラッと出てきて、「マニア」と「フォース」につながりがある?と思わせるような仕掛けもあります。

大谷:この音は、インフィニットが初出したE3トレーラー映像の最後に一瞬鳴っていたのですが、すぐに「ソニックマニア」との関連性を指摘しているファンの方がいて驚きました。

個人的にはウィスポンまわりの音がアクションの手触りと相まって気持ち良いですね。

澤田:ウィスポンはもとのカラーパワーのSEのイメージを踏襲しつつ、手持ちの武器としての操作感を気持ち良くしたかったのと、連続して使用するのがうまい使い方だったりするので、小気味のいい感じの音でまとめてみました。

大谷:今作は、ステージ中にもキャラクターもたくさんしゃべるので、音声データもかなり増えましたよね。大変だったことなどありますか?

澤田:同じセリフが6か国語分あるので、抜けや間違いが無いように配置、確認するのが大変でしたね。さらにカットシーンなどはアバターの音声が男女計6パターンあるので、それらもちゃんと鳴らし分ける仕組みを検証しつつ、全種類の組み合わせでチェックするのは苦労しました。

大谷:カットシーンのアバター音声も自然に混ざりましたよね。

カットシーン

大谷:さて、ここからはカットシーン(イベントシーン)の効果音制作について触れていきたいと思います。中村さん、嶺川さんには、2006年の『Sonic The Hedgehog』から参加していただいていますが、大変だったというか、印象に残っているのは『ソニック ワールドアドベンチャー』のオープニングムービーですかね。

中村:そうですね。とてもインパクトのある映像でしたので、効果音でイメージを損ねてはいけないと思い、かなり作り込みをした記憶があります。ばくだいな数の効果音で構成しました。

大谷:効果音だけのミックスを公開したいくらいの密度でしたよ。

大谷:カットシーンの効果音、具体的にはどんな感じで作り進めていくのですか?

中村:色々な作り方があるのですが、僕達の場合はまずバックグランドノイズ(BG)から制作していきます。ここである程度の空間や雰囲気などを構築して土台を作ります。次にフォーリーに入ります。

フォーリーサウンド

大谷:フォーリーサウンドとは、足音や衣擦れ、人の動作音などに関する音を、実際に録音した音のことですよね。

嶺川:はい、そうです。フォーリーステージと呼ばれるスタジオに行き、そこで人の動きや足音のムーブメントと呼ばれる物、ガレキや砂、鉄系などのプロップと言われる効果音を録音します。まず初めに、映像を見ながらフォーリーで可能な音をピックアップしてトラックシートを作ります。これを見ながら録音を進めて行きます。

大谷:ソニックが走るシーンでもソニックの足音をあてていくわけですよね?そんなに速く走れるんですか?(笑)

中村:走るのは大変です。まず持続しません(笑)。息が入らない様にしないといけないので「ハァハァ」と言えないので死にそうになります(笑)。足で音を出すだけでは駄目な時は手に靴を履いて録るパターンもあります。後は録音後の編集で何とかします。

足音の収録

大谷:確かに、不要な音も収録されてしまいますからね。それで、音の出にくい服装をしているんですね。

嶺川:不要な音が鳴らないようにという配慮はもちろんの事、フォーリー収録は動き回り汚れる事もありますので、毎回身軽な格好で作業します。砂利の上にヒザをつき、泥の中を走り、ハイヒールでジャンプし続ける時もあります!いつでも万全に作業ができるよう、靴は自分の足に合ったものを持ち込んで使用しています。

大谷:過酷な現場ですね(笑)。今回、僕もフォーリーの収録を見学させてもらったんですが、フォーリーアーティストが男性と女性では出す音も違いますね。

中村:基本的に海外では男女のペアでやる事が多いですね。技量もあるのですが女性のしなやかさは男性には厳しいですし、男性のごつい感じは中々女性には厳しいものもあります。もっぱら我々は重いと軽いですが......(笑)。

大谷:これは足音ですよね。

嶺川:足音を録音する時に気をつけるのが実際に"歩いている感"を演出すると言うことですが、とても難しいですね。すり足と呼ばれるものをうまく取り混ぜながら歩きます。止まったり振り返ったりするのはコツが必要になります。

大谷:これは何を録っているところでしょう?

キューボットの動きなどを収録

エッグマンの服の動きを収録

嶺川:これはキューボットの動きの一部です。ラトル系(ガタガタ言う音)を録音しました。

大谷:これは?

中村:こちらはエッグマンの服の動きですね。エッグマンに合わせて録っています。

大谷もフォーリー収録に挑戦。ベクターの鎖の音を収録。

大谷:革をひねって音を出しているんですかね?コツがいりますよね。

中村:一番良い音が鳴る所を探して、そこでギュギュッと絞りながら音を出しています。革によっては力加減の難しい物もありますが、色々な音を表現できるので面白いです。

大谷:僕もジャラジャラ系の音に挑戦してみたのですが、素材として、"使える音"を鳴らすのが難しかったです。使えましたか?

中村:こちらはベクターの鎖で使用しています。あまり目立ちはしてないのですが存在を表す上では重要な音です。

大谷:これは怪しいオジサンの写真ですかね?(笑)

中村:何ですかね、熊がピコピコハンマー持っていますね(笑)。エミーのハンマーで一つの要素として使いました。意外と振る音も使えて良かったです。

エミーのハンマー音?

大谷:フォーリーステージと呼ばれるスタジオには、効果音を収録するための様々な道具が置いてあるので、その中にピコピコハンマーがあったら手に取らないわけにはいきませんよね(笑)。「ヒュン」という風切り音、なかなかいい音をしていました。それにしても、1日がかりで全シーンに渡りたくさんの音を収録しましたね。

嶺川:そうですね。それでも今回は少ない方でしたので必要な音はあらかた録音できました。フォーリーには編集作業が必要です。ある程度絵に合わせて録音しているとは言え、完全には合わないので絵に合わせて行きます。そして録音した音に更に効果音を足して細かい動きや質感を完成させて行きます。例えば腕を振る音や打撃の音はフォーリーだけでは成立しない場合もありますので、迫力が出る要素を追加したりします。

また、ソニックの足音などは絵と音がぴったりと合う事も大切ですが、プラス、聞いていて自然で気持ちの良いスピード感になるよう、程よい歩幅間隔に音を調整している場面もあります。

中村:フォーリーの話が長くなりましたが、制作の順序としましてはBGの次にフォーリー、次に乗り物や爆発、ロボットなどの直接的な効果音を作ります。そして絵の順番でもあるのですが、エフェクトを作って行きます。この時点でかなりの効果音ができていますが、全ての要素を合わせて試聴して全体的に足らない迫力やイメージをつけていきます。これで効果音はほぼ組み込みが完了します。

大谷:こうして、全シーン、音楽と合わせて細かく音量調整をしつつ、英語、日本語、ドイツ語、スペイン語、フランス語、イタリア語と計6言語分の5.1chのサウラウンドミックスを作って完成というわけですね。

中村:そうですね、効果音は数がばくだいなので「プリミックス」と呼ばれる作業で数を減らしながらまとめて行きます。台詞も全てのキャラクターと部屋の広さや状況に応じてそこで話をしているかの様に整音していきます。それらと音楽を合わせながらファイナルミックスでマスターを作っていきます。粗方でき上がった時点でディレクターやプロデューサーの意向に沿って調整して完成になります。

大谷:同時進行で制作していた音楽と合体するのは、ファイナルミックスの時なんですよね。

中村:はい、最初は音楽と効果音と台詞を一緒に鳴らした時に音が重なり合うので盛大なつぶし合いをしています(笑)。音楽の良い所で爆発がドカ~ン!などです。特に台詞が聞こえないと問題ですので、まずは台詞を聞こえる様に調整しつつ、音楽と効果音を映像やストーリーに合わせてボリュームを上げ下げしていきます。音楽もCD版とは違ってすごく細かく大胆にボリュームを変化させています。音楽は感情を表したり、イメージを作り出しますので、とても重要なので音量を下げられませんし、効果音は臨場感や迫力を出すので音量を下げるとしょぼくなります。ただ全ての音量を上げる事はできません。細かく一瞬一瞬の良いとこ取りをしながら進めていきます。最後の仕上げですので丁寧に時間を掛けて作らないと全てが駄目になるので慎重にやっています。

大谷:本当にお疲れ様でした。カットシーンのミックスはゲームの制作工程の中でもかなり最後の方になるので、ファイナルミックスが完成した時はいつも感慨深いです。最後に何か一言お願いします。

中村:あまり話すとネタバレしてしまうので細かくは言えませんが、後半が大変だった分とても気にいっています。是非楽しんで下さい。

嶺川:様々な感情を音でも表現できるよう、フォーリー音は細部までこだわりました。音から伝わる恐怖感や力強さ、安心感などを楽しんで頂けたらうれしいです。

澤田:今回のソニックは今までにない「戦場感」を出せるようチャレンジしました。その中でも最初に制作した市街地ステージは細かく効果音をつけて戦場の臨場感がうまく出せたと思います。音速でステージを駆け抜けるのも楽しいですが、たまにはゆっくり回って細かいところを探索してみて下さい。

大谷:ありがとうございました!


効果音編、いかがでしたでしょうか?ゲームならではのインタラクティブな部分から映画の音響制作的な側面まで、幅広いノウハウとこだわりの詰まった効果音制作の一部を紹介させて頂きました。ゲームサウンドクリエイターを目指している方にとっても興味深い内容かもしれませんね。

ではまた!

株式会社Sound Racer
中村 栄治 / 嶺川 千春 (スーパーバイザーサウンドエディター)

映画の本場ハリウッドでサウンドエディティング技術を習得、その技術を活かし、幅広い分野で活躍中。
主な作品「ソニック」シリーズを初め『ゼルダの伝説 ブレス オブ ザ ワイルド』や「鉄拳」シリーズ、古くはファイナルファンタジーシリーズ等に参加。
詳しくは株式会社Sound Racer公式サイトまで

澤田 朋伯

『パンツァードラグーン』シリーズ サウンドディレクター
『ジェットセットラジオ』SE&BGM制作
『三国志大戦』BGM制作
『ソニックライダーズ』シリーズ サウンドディレクター
『ブレイザードライブ』BGM制作
『ライズ オブ ナイトメア』サウンドディレクター
『ソニック ロストワールド』SE制作 など