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ソニックチャンネル

連載サウンドコラム

ソニックチームのサウンドディレクター瀬上 純と大谷 智哉によるコラムコーナー。

祝!レコード発売!

みなさんこんにちは、「ソニック」シリーズサウンドディレクターの瀬上です。

『ソニックアドベンチャー』と『ソニックアドベンチャー2』のサウンドトラックのレコード盤が発売となりました!ぱちぱちぱち。

今回のコラムでは、そのレコードに関して色々と紹介したいと思います!

全世界300個限定のボックスセット。シリアルナンバー付きの認定証が封入。

皆さんは音楽を「聴く」ときは、どういう場所で、どういうメディアで聴かれますか?

今ではファイルやストリーミングなどデジタルで音楽を聴いたり、動画サイトを通じて音楽を楽しむということも、ごく普通のことですが、僕が最初に「音楽を楽しむメディア」として接したのはレコードでした。

10代の頃、「レコード屋さんに足を運ぶ」ということは、すごくワクワクすることで、店内で流れている音楽、ディスプレイされているジャケットのアートワークなど、視覚・聴覚の両方で刺激を受ける空間だったと記憶しています。

時間さえ許せば何時間も店内で過ごし、そのときに気になった1枚を大事に持ち帰り、針を落とすのが楽しみでした。

知らないアーティストの作品でも、アートワークが気になったことが発端となって手にしたアルバムは何枚もあります。

レコードの場合、ジャケットから盤を取り出してターンテーブルに乗せ、その外周に針を落としたら、その面の再生が終わるまでジャケットを片手にアートワークや書かれたクレジットに目を通しながら、その前を離れることはありませんでした。

各々の面は20分程度で終わってしまうのですが、そこには起承転結する流れがあり、別の面に引っくり返して次のストーリーの始まりを感じるのも楽しみのひとつでした。いつでも簡単に曲をスキップできたり、曲順を組み替えられたりするデジタルとは異なり、便利ではないがゆえに、音楽という作品に向き合うことができるメディアだな、と思います。

振り返ってみると、レコードやカセットテープ、CDからデジタルと音楽メディアの変遷を、身をもって体験できたことは良い世代だったと思います。ですが、自分がゲームに付随する商品として音楽作品をリリースするようになった頃には、既にCDの時代でしたので、「レコードを作る」ということができなかったのは、常に残念に思ってもいました。

「リヴァイバル」という言葉もありますが、一度廃れたメディアが復活するというのは、そうあるものではありません。

しかし、ここ何年かはアナログレコードが持つ音の表現力であったり、大きさゆえのパッケージングの魅力であったり、という話題が巷で取り上げられるようになり、新しくリリースされたり再発された盤を目にするようになってはきました。

そんな中、まさか自分が関わった作品をレコードにすることができる日がやってくるとは思ってもみませんでしたので、実際にカタチとなって仕上がってきたときの感激たるや、という感じでした!

レコード盤へのこだわり

レコーディングには幾つもの工程がありますが、その最終段階で楽曲の音の全体像を整えたり、音量や音圧を調整したりする「マスタリング」と呼ばれるプロセスがあります。長年、お世話になっている「マスタリング」の担当者より、アナログディスクのカッティングルーム開設の案内が届いたことが、ひとつのキッカケとなりました。

実は、このマスタリングスタジオにお世話になりはじめたタイトルが『ソニックアドベンチャー』でした。

その担当者が作る音が僕の音楽性に合っていると思うよ、という友人の紹介が付き合いの始まり。音源をSONS OF ANGELSとしてリリースすることになった『ナスカー アーケード』や『ソニックアドベンチャー2』、と続き、それ以降、『ソニックジェネレーションズ』などを含め、ゲーム用の音源やCD作品問わず、多くのタイトルを担当してもらっています。

そして、SEGAに入って初めて関わったタイトル『ヘブンリーシンフォニー』時代から付き合いがあり、『ソニックアドベンチャー』でタッグを組んだ在ニューヨークのプロダクションBeat On Beat, inc.の担当者が、そのマスタリングスタジオにレコードを作るためのカッティングマシンを海外から持ち込んだなんて、でき過ぎなストーリーではありませんか!?

そこで2017年初夏に音源をレコード化する案件を企画立案し、ご一緒させて頂くメーカーが決まり、商品化に向けたプロジェクトが動きだしました。

2018年1月にはアメリカで開催されるゲームとゲーム音楽の一大イベント、MAG Festへ”Sonic Adventure Music Experience”としての出演も決まっていたため、そのタイミングにリリースできるようにねらいを定めて制作の準備をしました。

「ソニックアドベンチャー」シリーズのサウンドトラックは、ゲームが発売された当時や「ソニック」生誕20周年などにパッケージとして商品化しています。ですので既にそれらを持っているひとにも気に入ってもらえるような、そんな商品作りをすることがコンセプトでした。

自分でレコードを作るならば、こういうパッケージにしたい、ブックレットはこうあるべき、盤面とレーベルの組み合わせはこうだといいな、と思い描くベストなものにすべく、妥協することなく盛り込みました。

初回限定盤は、『ソニックアドベンチャー』は、青と白のビニールを使用した盤面色。そして、『ソニックアドベンチャー2』は、もちろん(?)青と赤のビニールを用いた盤面色で。特に赤と黒のコントラストが気に入っています。

残念ながら、アナログレコード盤には収録できる分数に限りがあるため、すべての曲を収録することはできません。他の楽曲制作担当者を含めて頭を悩ませつつ、それぞれの面にストーリーを持たせられるような方針で選曲しました。

また、音源についても、ゲームやCDで取り扱うようなデジタルデータとアナログレコードでは、それぞれ最良とされるマスタリングの方向性が異なります。ですのでCDのために行ったマスタリング音源を流用はせず、各楽曲をミックスした段階の音源まで立ち返って、今回の作品に最適な作業をしています。

アナログハーフのテープ。直径約25cm。

楽曲をミックスする際にアナログハーフのテープへとプリントした楽曲は、それらのマスターテープを使用して作業し直しました。曲によっては、以前の音源では使われていなかった部分まで使っていたりしますよ。

また、商品としてはアナログレコードですが、MP3や.wavなど任意のフォーマットでデジタルファイルとしても新しくマスタリングされた音源を楽しんで頂けるようにダウンロードのコードも付属しています。以前の音源をお持ちの方は、是非、聴き比べてみてくださいね!

→『ソニックアドベンチャー』『ソニックアドベンチャー2』 アナログレコード 商品情報

次回以降のコラムでは、アメリカで開催されたMAG Fest出演の様子、そしてJAPAN Game Music Festival II:Reの様子などを順次紹介していきたいと思います。

それでは、また次回...
See Ya!!!


※1 ハーフインチ幅を持つ磁気テープ。スタジオでのレコーディングの際、ミックスされた楽曲を録音していたメディアのひとつ。アナログテープならではの温かみがある音が特徴。