ソニック & ウィスプ 後編
岩や草木が風にただよう、ウィンディバレーのおだやかで静かな昼さがり。
風車の間を縫い、音もなく逃げる「影」と、それを音速で追う光の風が、追いつ離れつの追走劇を繰り広げます。
シアン・レーザーとなって浮揚する風車岩に迫ったソニックは、そこで「影」の姿を遠方に浮かぶ浮遊島に認めました。空にただよういくつかの風車岩を使い、レーザー反射での光速移動で島にたどり着くと、そこではモグラとイエローウィスプがソニックを待っています。
無言で地面を指し示すモグラとイエローウィスプ...... それを見たソニックは、その意を得たりと今度はイエローウィスプの力を借ります。
「そっちに逃げたか......OK! 今度は地底探検としゃれこむとするぜ!」
イエローウィスプとハイタッチで合体変身。「イエロー・ドリル」となったソニックは、黄色に光り輝くドリル形態で地中に潜っていきます。
ぼごぼごっ!ずんずんずんずん!
浮遊島内部の苔むした石畳や草の香りのする土の層を、イエロー・ドリルは苦も無く高速で掘り進みます。はたして地下空洞にたどり着いたソニック達は、そこであの「影」の姿を見つけました。
慌てて姿を消しながら上部に逃げていく「影」。見上げると地下空洞の天井には亀裂があり、そこから続く長いタテ穴のはるか先には青空がのぞいています。
「ウーン......また逃げられたか......」
と言いつつもその声はゴキゲンで、楽しさと嬉しさではちきれんばかり。上機嫌なソニックのもとに、亀裂の向こうからフワフワと飛んで迎えに来てくれた、オレンジウィスプがジェスチャーで猛烈に自己アピールをします。
「△*△*△=↑↑△〇〇#%!!」
「Ok Ok! わからないけどわかったぜ!あのオバケに一気に追いつくぞ!」
オレンジウィスプとハイタッチしたソニックは「オレンジ・ロケット」に大変身。 猛烈な爆炎と煙を地下空洞内に噴出させ、発射のための力をためます。
ごごごごご......ぼおお......っ!
どごおおおおおおーーーん!
天井の亀裂を抜け、浮遊島のタテ穴を猛烈な勢いで垂直上昇していくオレンジ・ロケット。浮遊島の登頂部から炎と爆炎を伴って飛び出したオレンジの光弾は、さながら大砲から打ち出された砲弾のようです。
あっというまに雲間を抜け、強風吹き抜ける高空に躍り出ます。さっきまでいた浮遊島は、はるかに眼下にぼんやりと見えるのみです。
「Yeaaaaa! さいっこうだぜ!」
「ピー! ピー!」
滞空しながら呼ぶ声に辺りを見回すと、そこにはツバメがソニックを待っていました。「影」の行った先を教えてくれるようです。
いったんソニックの姿に戻り、スカイダイビングの要領で風を受けてちょっと減速しながら、ツバメの誘導で近場で浮いている高空ハイウエイに飛び降ります。
ウィンディバレー上空層に広がる、上昇気流と不思議な揚力を受けて浮かぶ空のハイウェイ。「影」はここを逃げて行ったのだと、そこで待機していたオウムが身振り羽振りでソニックに伝えます。
「Thanks! ありがとな。最後はこの足で決めてやるぜ!」
かかとを2度3度地面に打ちつけると、とびっきりのスピードで駆け出します。
空から地表へと、びっくりするような勾配と傾斜をともなった急カーブ。 はたまたジェットコースターのようにぐるりと輪を描いた360度ループが次々と繰り返される、まさに突風の通り道のような空のハイウェイ......
勝手知ったる大好きなこの道を走りながら、もうソニックには「影」の正体の見当はついていました。今はもう会うのが楽しみなだけです。足に力を入れてさらにスピードを上げます。
最後の緩やかなカーブを伴って伸びる一本道の先に、小さな浮遊島が見えます。
そこには、エッグマンが置き忘れた動物捕獲用のカプセル装置の残骸があるのですが、「影」はそこに逃げ込んだようでした。ニヤリと笑うソニック。
それから一瞬で到着したソニックは飛び上がり......
「さあ、鬼ごっこはこれでオワリだ!」
......ぽんっ!
カプセル装置を蹴っ飛ばして破壊すると、はたしてそこには......
「......△◎###」
もじもじしてソニックを見上げる「ジェイドウィスプ」......緑色のオバケの姿がありました。
「ジェイド!やっぱりオマエか!また会えてうれしいぜ!」
ジェイドウィスプは、まさにオバケのようなウィスプで、フワフワと空を飛べることはもちろん、体を透明にして誰からも見えなくしたり、壁や物を通り抜ける力を持っているのです。
このジェイドウィスプはウィンディバレーへの合流がちょっと遅れました。 なので、すでに仲良くなっているみんなと友達になりたいと思いながらも、恥ずかしがってなかなかあいさつが出来ずにいたのでした。
なーんだそんなことか、と笑うソニック。
「今日一日、みーんなと追いかけっこして、すっごく楽しかっただろ? オレ達はもうとっくに友達さ!」
わっと沸いてジェイドウィスプを取り囲んで歓迎する、ウィンディバレーの動物とウィスプたち。ジェイドウィスプはもちろん、みんな大喜びです。
走り慣れたウィンディバレーでしたが、ウィスプや動物たちと走った今日のウィンディバレーは、新しい楽しさにあふれていました。友達と遊ぶということの素晴らしさは、まさにこういうことなのかもしれません。
......なんてことを考えていたソニックのもとに、ジェイドウィスプが近寄ってきました。
「......◎◎##!=〇!」
ジェイドウィスプがソニックに触れると、ソニックの体が透明になっていきます。
「......なーるほどねえ。第2ラウンドっていうことか」
ジェイドウィスプと合体して「ジェイド・ゴースト」となったソニックはニヤリとすると、その場の皆に呼びかけます。
「Hey guys! 今度はみんなが鬼だ!ウィンディバレーのオバケ......オレたちを捕まえられるものなら捕まえてみな!」
そう言いざま、すう、と消えていくジェイド・ゴーストのソニック。
...... ウィンディバレーに、オバケ vs みんなの、熱い鬼ごっこの第2ラウンドがスタートしたのでした。