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ソニック & ブレイズ 前編

静謐(せいひつ)で透明な光が射し降りる、サンゴと水晶の海底洞窟「コーラルケイヴ」。

その静寂を引き裂いて、恐ろしい爆発音が空洞内のあちこちで響き渡ります。

爆音の残響がこだまする中、洞窟のそこかしこに何体も横たわる、火花を上げて燃えるロボットの残骸の数々......

立ち昇る火煙を片腕で水平に払いのけて一歩踏み出し、押し寄せる海賊ロボットの軍勢をむしろその威で押し返しているのは、紅き炎をまといし貴人......ブレイズ・ザ・キャット、その御方(おんかた)です。

「どうした。もう終わりか?」

鬼神のごとき形相の彼女をゆっくりと包囲し、一斉攻撃をしかけんとする海賊ロボットたち。

それを迎撃せんと腰を落とし、後ろ手に宿した炎の力をより強めたブレイズでしたが......

「Hey hey hey~! どこ見てるんだ、このポンコツロボット!」

突然現れた、青き風を引き連れしハリネズミが、目にもとまらぬスピードで海賊ロボットを次々と弾き飛ばしていきます。

それは海賊ロボットの最後の一体を、そのトゲだらけの体の体当たりで仕留めると、反動を利用してのジャンプでブレイズの隣りに降り立ちました。

「よう、ブレイズ!久しぶりだな」
「ソニックか......」


「......この国の皇女さまは、海賊退治までやるのか?」

洞窟奥へと逃げ込んだ海賊ロボットの残党を追い、生真面目な表情で先を行こうとするブレイズの横に並んで、ソニックは茶化すように問いかけます。

「夜中にソルエメラルドが騒いでな。その導きに応じてここに来たらこの状況......後は成り行きだ」

その軽口を意にも介さず、淡々とブレイズは答えました。

ブレイズは、ソニックたちとは異なる世界に住む「ソル皇国」の皇女さまです。そしてその身に宿した「炎の力」をもって皇国の平和と、秘なる貴石「ソルエメラルド」を護る守護者でもあります。

「成り行きとはいえ、悪党どもを見てしまったからには見過ごせない。だからこうして片付けている。......お前はどうなのだ?」

そう言えば、と思い出したような表情をしたソニックはそれに答えます。

ソニックは、神秘の秘石「カオスエメラルド」が手元に6つそろったことで、トゥインクルパークに残しておいた7つ目のカオスエメラルドを確認しに行っていたのです。

そして7つが一堂に会した瞬間、突然輝きだしたカオスエメラルドの光がソニックを包み......気が付いたらコーラルケイヴの中にいたのでした。

「で、ここに来てみればこの状況......オレも後は成り行きってヤツさ」
「ふむ。そうか......」

そこに襲い掛かる、海賊ロボットの襲撃第2波。

これらの海賊ロボットの親玉はすでに倒したはず...... 主を失い、野良と化したロボットたちは所々破損し、動きも洗練されていないのですが、どこからでも砲撃してくるガンタイプや恐ろしい破壊鉄球を振り回すホーガンタイプなど、これらがまとまった数となった時の脅威は侮れません。

入り乱れる攻撃の中、ブレイズが炎であらかたの敵にダメージと移動阻害を与え、ソニックがそのフォローをしつつトドメを刺す...... 久しぶりとは思えない見事な連携で、2人は海賊ロボットを撃退していきます。

まもなくして...... 第2波を退けた2人は、いつしかお互い背中合わせになった陣形のまま一息つきました。

「いいねェ......! しかし、オマエが他人に背中を預けるようになるとはな」
「誰とでも、というわけにはいかぬさ」

ソニックとはかつて冒険を共にし、強大な敵を共闘で倒した仲でもあるブレイズですが、出会った当時は生真面目で何事も自分だけで解決しようとする、ちょっと近寄りがたい雰囲気も持っていました。

そののち、ソニックとの冒険の中で他者と力を合わせることの強さを知り、エミーやクリームたちとの邪気の無いふれあいの中で、少しはハメを外すことにも寛容になったブレイズは、人の上に立つ権威者としてだけでなく、友人としてもより柔軟な魅力を持つ人物となったのです。

そんなブレイズの小さな変化を嬉しい気持ちで歓迎していたソニックでしたが......

「ああ、まて、ソニック。その、だな......」

不意にブレイズの方から話しかけられ、珍しいこともあるものだとソニックが振り返ると、ブレイズはそっぽを向きつつこう付け足します。

「たとえお前だとて、いつでも、というわけでは無いのだからな」

ブレイズの心の根っこは変わっていない......安易に懐には入らせてくれないその高潔な生真面目さを、さらに嬉しい気持ちでソニックは歓迎したのでした。


海賊ロボットの襲撃が収まり、こちらから打って出て敵の拠点を叩こうと決めた2人は、残党狩りをしながらコーラルケイヴの奥へと進んでいきます。

そして小一時間ほど探索を続けたころでしょうか。最深部近くにまで来たところで、ソニックは周囲の雰囲気が大きく変わったことに気付きました。

地下深い洞窟の中だというのにどこから射し漏れるのか、透き通ったエメラルドグリーンの光でこの一帯は明るく照らされ、心なしか空気も清浄なものになったように感じたのです。

簡素ながら洗練された装飾をともなった外壁に手をやりながら、ソニックはここが何か特別な区域であることを理解しました。

そしてこの空洞正面にある階下への階段口の奥に注意を向けると、金属のきしみ合う音......大量の海賊ロボットの気配が強く感じられ、出入りするロボットの足跡も多数見られたのです...... ここが海賊ロボットの拠点と見て、間違いないでしょう。

これから起こる大活劇への期待に胸を膨らませ、ソニックはブレイズに軽口を飛ばします。

「パーティーの準備はできてるようだぜ、皇女サマ?」
「............」

無言で返すブレイズを、いつものこととて気にもせず横を通り抜け、階段口に向かおうとしたソニックでしたが......

その行く手は、ブレイズの炎を宿した手によって遮られます。

「Hey! なんだってんだ?」

驚いたソニックがブレイズを見やると、怒りの形相のブレイズが階段口の奥へとまばたきもせず凝視しているではありませんか。

そして一瞬、圧倒されかけ、冗談で絡もうとするソニックを制するかのように、ブレイズはゆっくりと......しかし静かな怒りを帯びた口調で、こう告げたのです。

「......ここからは私の問題だ。お前は帰ってくれ」
「......!?」

無風の海底洞窟に、冷たい緊張の波が押し寄せました。

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キャラクター紹介

→ソニック・ザ・ヘッジホッグ
→ブレイズ・ザ・キャット