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『ソニック ランナーズ』の楽曲制作 #1

みなさんこんにちは、「ソニック」シリーズ サウンドディレクターの大谷です。

8月も終わりですね。
わたくしこう見えて、夏とか海とかわりと好きなタイプです。
だからと言って、パーリーピーポータイプではないと思います。(何)

この夏、ふと気がつけば、会社に行く時も海に遊びに行く時も、ほぼ同じかっこうをしてたと思います......ですがせめて、ビーチサンダルでは出勤しないよう気をつけておりました。(だから何)
みなさまはどんな夏を過ごされましたでしょうか?

さて、絶賛配信中の『ソニック ランナーズ』ですが、昨日まで期間限定スペシャルステージイベント「真夏のトロピカルコースト」が開催されていました。
「春のウィンディーヒル」「デザートルーインズ」に続き、新曲が投入されたスペシャルステージイベントとしては3回目になります。

『ソニック ランナーズ』の楽曲の特徴の1つは、期間限定イベントで定期的に新曲が投入されていくという点です。コンシューマータイトルでは、長い期間をかけて制作された100曲近い楽曲が、1つのパッケージとしてリリースされますが、『ソニック ランナーズ』では、最初にリリースした楽曲に加えて、定期的に開催される期間限定イベント用の楽曲制作を続けています。

イベントが開催されると、Twitter等のSNSで新曲の感想を投稿してくれている方がいて、ありがたく読ませてもらっています。コメントやリツイートなどさせてもらっているのですが、今後のイベント曲を作るにあたり、あの曲のアプローチが評判良かったから、それを発展させて作ってみようかな~とか、逆手にとって全く違うアプローチで変化をつけてみようかな~とか、考えることが出来るのも面白い点です。

今回は、そんな『ソニック ランナーズ』の楽曲がどのようにして作られているか、その制作過程の一部を書いてみようと思います。

作曲

まずは全ての始まりとなるスタート地点、私がコンピューターやギターなどを使い作曲し、楽曲のデモバージョンを制作します。頭の中で、楽曲の具体的なイメージをある程度固めてから、着手するようにしています。

最終的には生演奏に差し代わる楽曲のデモバージョンとは言え、それをプロデューサーやディレクターに聴いてもらい、この曲で進めてよいかOKをもらう必要がありますので、どんなノリで、どんなメロディで、どんな楽器の音色で構成された曲で、どれくらいの長さで、どのような構成、展開があるのかなどなど、誰が聴いても、それがどのような曲か判断出来るデモになっている必要があります。

ギターのパートなどは仮に自分で弾いて録音しておくのですが、これがテンポの早い曲ばかり......自分で作っている曲なのに自分の演奏が全く追いつきません(笑)

作曲に使用しているソフトウェア「Cubase」のアレンジウインドウ

デモを聴いてもらい、すんなりと「ゲームに合っている」「良いと思う」「かっこいい」などと言ってもらえたら万歳ですが、そんな時ばかりではありません。
「もっとこうして欲しい」「イメージと違う」などなど、意見をもらうこともあり、その場合はそれらの要望を吸収する形でバージョン2、3と制作し、摺り合わせていきます。

デモのOKをもらったら、レコーディングへと進めていきます。『ソニック ランナーズ』の楽曲はドラム、ベース、ギター、ピアノからなるバンド編成を基本としてしますが、 スペシャルステージイベント用の曲は変化をつける為、ヴァイオリンやアコーディオンなどアディショナルな楽器を足すようにしています。それらを収録する為の譜面やオーディオデータの準備を進めていきます。

レコーディング

レコーディングのスケジュールや予算の調整が済んだら、各パートのミュージシャン、録音や整音を担当してもらうレコーディングエンジニアとスタジオに入ります。

バンドのレコーディングにもいろいろな方法があります。
メンバー全員がスタジオに集まって、「せーの」 で演奏したものを収録するパターンや、パートごとにダビング(重ね録り)していくやり方があるのですが、私が採用しているのは後者です。

完成系のサウンドは自分の頭の中にあるので、1パートづつ順番にミュージシャンの方と向き合いながら、パターンやフレーズ、演奏のニュアンス等、それこそ小節単位で細かく詰めて行きます。私が打ち込んだデモトラックの意図を汲んでもらい、違うパターンを提示してもらったり、デモのパターンをそのまま弾いてもらったり、音で会話をしつつ、その曲のそのパートにとってベストなテイクを作り上げていきます。

ドラムを収録した時の写真です。タイトなドラムサウンドに仕上げたいので、その曲で必要なキットのみセットされています。バスドラムの上にタオルが敷いてあるのは、ハイタムの余韻を調整するため。また、 この写真では見えないかもですが、スネアドラムに紙を敷いて叩くことでバシッと引き締まったタイトなスネアサウンドを作っていたりと、より良い音を収録する為のミュージシャンとエンジニアによる様々な工夫が施されています。

こちらは別なスタジオにて、ヴァイオリンとヴィオラを収録した時のマイキングを記録しておいた写真です。

楽器の近くに立てるマイクで実音を収録し、少し離れたところに立てるマイクで部屋全体の鳴り、空気感を収録しますが、この写真を見るとずいぶんと複数のマイクが立っています。マイクごとに特性があり、ふくよかなサウンドや艶やかなサウンド、エッジのあるキラッとしたサウンドなど、録れる音のキャラクターが異なるため、何種類かのマイクを立てて収録します。
そして、最終的に他のパートと合わせて調整する際、どのマイクで収録したサウンドが最も曲に合うかを聴き比べて選んでいきます。

完成!

全てのパートの録音が終わったら、演奏を整える編集作業を行い、エンジニアが全パートの音色や音量バランスを整え、その曲にとって最適なサウンド作り上げる「ミックスダウン」という作業をして完成です。

楽器の録音、ミックスダウンに使用するソフトウェア、Pro Toolsの編集ウインドウ。「真夏のトロピカルコースト」イベントの曲のデータ

このようにして『ソニック ランナーズ』の楽曲は、私が作った曲にミュージシャンやエンジニアの才能や技術や知識などが合わさって完成しています。今回のコラムでレコーディングの全行程を網羅出来たわけではないので、また第2回、第3回と取り上げていきたいと思っていますが、スマートフォンのゲームの音楽もこだわって作っているんだな~と思ってもらえたら幸いです。

「ソニック」シリーズの音楽担当として、音楽の魅力でゲームを長く遊んでくれる人が少しでも増えるように、ガッチリとハートを掴める楽曲を作るため、日々試行錯誤してますので、今後もよろしくお願いします!

ということでまた次回!


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