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スーパーソニック & Dr.エッグマン 後編

「『超・特殊重力打撃捕獲鉄球:エッグ・グラビトン』!
重力のトリモチでキサマを捕まえ、そのままぺしゃんこに叩き潰してくれるわ!」

エッグマンが兵器の出力を上げると、その恐ろしい鉄球は周囲の希薄な大気と微粒子を吸い寄せながら加速を始め、あっという間にエッグモービルの周囲を高速回転し始めました。

その勢いから、幾度となく高速で繰り出される鉄球の1振り2振りを、スーパーソニックとなったソニックが、金色の軌跡を描いて回避します。

エッグマンの操る超重力の鉄球が空間を切り裂くたびに、その異常な重力が周囲に浮かぶ機械くずやガレキを引きずり、宇宙ゴミ...デブリの奔流となってソニックを襲います。

「ホ~レ、ホレホレ!」

一方のソニックも負けてはいません。「エッグ・グラビトン」の攻撃をかいくぐりつつ、その重力を利用しての急カーブ......重力ターンをも決めながら、エッグマンを翻弄します。

「どぉーしたソニック? 攻撃してこんのか? さては怖じ気づいたな?」

「No way! まさか! エッグマンにしちゃ面白いオモチャを作ったから、楽しんでやってるだけさ」
「つまらん負け惜しみを......! 早くワシを倒して助けにいかんと、地上が火の海になってしまうぞ? 」

そう言いざま、防戦一方に見えるソニックにエッグマンが笑い声を浴びせようと思った、その時です。

「......それは無いと思うよ、エッグマン?」

ソニックとエッグマンの通信機に、聞き覚えのある、あの声が飛び込んできました。


「......!?」

一瞬、攻防を止めたソニックとエッグマン。何事かとエッグモービルのコンソールをのぞき込むエッグマンを待っていたかのように、その声は続けます。

「電波ジャックや、ロボットに命令を出しているエッグマンの人工衛星なら、ボクがハッキングしてダメにしちゃったからね!」

それは、まぎれもない、ソニックの相棒のテイルスの声でした。

「なんじゃと......!!! コレは一体......!?」

コンソールの戦略ディスプレイを見て、エッグマンの表情が一瞬固まりました。征服の進捗が一向に進んでいないどころか、所々で押し戻されています。エッグマンに焦りの表情が浮かびました。

それを感じ取ったテイルスは、さらに意気揚々と続けます。

「電波ジャックには高エネルギーが必要だからね。ボクの『エネルギー検知器Ver.2.0』ですぐに見つけることができたよ! それでエッグマンの人工衛星は電波じゃなくて光信号で通信してたから......おかげで電波ジャック中でもハッキングができたんだ!

......で、そうしたら世界中のあちこちですごい反撃が始まって......みんなすごいんだ!」

今や各地でソニックの仲間たちが、暴走するだけになったエッグマンのロボットを迎え撃っていたのです。地表に向けてのサムズアップでソニックがこたえ、エッグマンは激昂します。

「ナイスだテイルス! 何とかしてくれると思ってたぜ!」

「そ、そんな馬鹿な!おのれえええ!」


エンジェルアイランドでは、マスターエメラルド制圧に強襲してきたロボット軍を、ナックルズが独りで迎撃しています。先祖伝来の戦闘グローブは破壊力抜群......!まとめて2、3体を吹っ飛ばしたナックルズは笑みを浮かべて豪語します。

「っっしゃあああ!いくらでもかかってきやがれ!」

ステーションスクェアでは、エミーが「トゥインクルパーク」の入口で仁王立ちです。襲い来る敵をピコピコハンマーで叩き潰していきます。

「イカしたカップル以外、入場禁止なんだから!」

クリームは世界中を飛び回って避難するみんなを助け、ベクターはカオティクス探偵事務所の仲間と共に遊撃を続けます。そして宇宙人のウィスプたちは、彼らのスーパーパワーを転用できる武器「ウィスポン」で惜しみなく協力をして、世界中でみんなと一緒に戦ってくれているのでした。

エッグモービルの戦略ディスプレイに、エッグマン軍の不利な状況を示すアラート表示が次々と表示されます......

それを全て消去・非表示にすると、エッグマンはソニックに向けて指をさし向け、不屈の宣言でこれに相対しました。

「どいつもこいつもワシの邪魔をしくさりおって......!だが、まだまだじゃ! このくらいはまだ想定の範囲内じゃワイ!」

「......なるほど、アリガトなエッグマン。これが負け惜しみの見本ってヤツか」
「やかましい! ......フン、キサマ。これが火を噴いた後も同じことが言えるかな?」

エッグマンの背後でまばゆい光が広がり、スペースコロニーの主砲「エクリプスキャノン」がついに射出されます。

<<ぐおおおおおっ!>>

本来のたった0.5%の出力ながら、砲塔の周辺、何十キロもの大気を帯電させる程のすさまじいエネルギーの奔流が、地表に光の柱となって突き立ちます。それを見送るソニックの表情が一瞬固くなります。

「......!」

そして着弾した地表からは大爆発が......

「............!?」

起こりませんでした......。 エッグマンが色を失って叫びます。

「なぜじゃ!? しょぼい出力とはいえ、確かにエクリプスキャノンの一撃なんじゃぞ!?」


星をもうがつエクリプスキャノンの一撃......それは、白銀のハリネズミ、シルバーのサイコキネシスによるバリアーによって完全に防がれていたのでした。

地上100m...... 人々の歓声を足元から受けながら、オゾン臭ただよう帯電した大気の中空に両手をかかげ、光の盾を展開したままの空中浮揚でシルバーは笑います。

「撃つ場所を間違ったな、エッグマン!」

「あ、ありえん...!なんと滅茶苦茶なヤツじゃ!...ええい!ならばまた他の所に撃つまでじゃ!まだもう一発くらい......」

コンソールのボタンを連打しながら吠えるエッグマンに、今度はトレジャーハンターにして腕利き諜報員でもある、ルージュから通信が入ります。

「あ~らゴメンなさい。エクリプスキャノンだったらもう停止させたわよ♪」
「ぬなっ!?」

ルージュの通信の発信源はなんとスペースコロニー・アークの中央制御室です。

「エッグマンランド跡地に放置されてたワープ転送装置、使わせてもらっちゃった♪ ドクターのこういう抜けてるところ、好きよ♡」
「ぬぬぬぬ、キサマ、ルージュか! じゃがそっちにはワシの精鋭ロボット部隊がおったはず......」

<<ドッゴオオオン......!>>

エッグマンの声を遮るかのように、ルージュの背後で起こった爆発音がエッグモービルの通信機を通して聞こえてきます。

その通信機の向こう、スペースコロニー・アークの中央制御室で、最後のロボットにとどめを刺し、ゆっくりと立ち上がったその黒い影は、ルージュの通信機をつかむと冷たく言い放ちました。

「不愉快なゴミなら処分したぞ、ドクター」

それはまさに漆黒のハリネズミ、シャドウ・ザ・ヘッジホッグの声でした。

「シャドウまで!? おのれ、おのれ、おのれえええ!!」

......やることなすことが全て阻まれ、顔を真っ赤にして悔しがるエッグマンに、満を持してソニックが告げます。

「このオレをどうしたからって、オマエがこの星を好きにすることなんてできやしないさ。なぜってこの星には、オレ『たち』がいるんだからな!」

両手を握って力をこめ、金色のオーラをひときわ強く発しながら、ソニックはエッグモービルに接近しつつ続けます。

「今ここでオレがスーパーソニックになってるのだって、いろんなヤツらとの出会いがあってこそだ! この絆の強さを知らないオマエなんかに...」

こう言いざま、渾身の一撃を加えようとするソニックを......

エッグマンの気迫の大音声(だいおんじょう)と、「エッグ・グラビトン」の最大出力による重力波動が押しとどめました。

「えええい!やかましい!」

降り下ろした超重力鉄球がソニックの近くの重力シリンダーを直撃......! 双方の重力ジェネレータが干渉を起こし、恐ろしい爆発が起こります。

重力シリンダーは、エッグ・グラビトンの超重力でメキメキと圧壊しながら鉄球に貼りつき、さながら鎌のような形状となっています。それを右に左にと振り払いながら、エッグマンは狂気の怒声を上げたのです。

「なーにがオレ『たち』......何が『絆の強さ』じゃ!そんな、その辺のボーっとしとるヤツの頭を叩けば出てくるようなお題目...... IQ300の超天才のワシが、考えておらんとでも思うたか!」

2度、3度とエッグ・グラビトンを振り回し、ソニックに迫りながらエッグマンは啖呵(たんか)を切り続けます。

「そんなモンはとっくの昔に何度も考えて......何周も何周も思考を巡らせた結果、ワシの科学力の足元にも及ばんと結論済みじゃ!

悔しかったらみんなで力を合わせて、この星の自転をチョットでも止めてみせるがよいわ!

ワシは、我が力をもって世界をギャフンと言わせ、その上で究極のエッグマンランドを作って見せてやるのじゃ!」

会心の斬撃がさらに別の重力シリンダーに直撃......! 今度は動力炉に直撃し大爆発を起こします。


......エッグマンの大演説とも逆切れとも言いかねる、この気迫。

一瞬、毒気を抜かれて聞き入ってしまったソニックでしたが......その自信にはちょっと感心しつつも苦笑すると、両の手のひらを上に向けて肩をすくめてこう答えたのでした。

 

「Great...... 天才過ぎてついていけないぜ」

それを受けて必殺の一撃を準備しながら、声のトーンを落として威嚇するエッグマン。

 

「じゃろうな。ならば置き去りにするのみじゃ......」

すでに色々な物を吸い付けた「エッグ・グラビトン」は最終的に直径20mほどに巨大化し、「超特殊重力捕獲打撃鉄球、エッグ・グラビトン最終形態」となっています。

これを重力レールガンによる超加速で射出するこの最終攻撃は、いかにスーパーソニックとしても避け切ることは難しいでしょう...... かすりでもすれば、重力にとらわれてジ・エンドです。

「ハン、面白い。やれるモンならやってみろよエッグマン?」

エッグマンが発射ボタンに指をかけながらソニックを見ると、ソニックはもはや飛び回らず、前傾姿勢をとりながら全身に黄金の力をみなぎらせ、エッグマンを不敵な笑みでにらみつけています。

「真っ向勝負か...... それでこそソニックじゃな」
「ちゅうちょしないオマエこそ、エッグマンらしいぜ......」

...... 一瞬の間、2人の間に一陣の風が吹き抜けたように感じられました。

その後、ボタンを押すエッグマン。 轟音を上げて射出される重力の狂気......!

 

「さらばじゃ!周回遅れのハリネズミよ!」


その時......

うららかな陽気に包まれた、ソニック達とは異なる世界にある「ソル皇国」王城にて。

その世界の秘宝である「ソルエメラルド」が、7色の光を発しながら歌うように小さく震えだしました。

異常に気が付いた近衛兵が、何か厄災事ではと、慌ててその主を仰ぎ見ると......

ソルエメラルドの守護者でもある、ブレイズ・ザ・キャット皇女は、その歌うようにして光るソルエメラルドに手をかざすと、安堵(あんど)の吐息をもらし、席に戻ったのでした。

近衛兵を安心させるかのような鷹揚なものいいで、彼女は続けます。

「問題ない。この分なら大丈夫だ」

そして執務に戻りながら、目を細めてつぶやくのでした。

「いい土産話が聞けそうだな」


......そしてふたたび、音も、時間すらも消失したかのような漆黒の虚空。

ソニック達の星のはるか上空の宇宙空間に、2つの、うがたれたタマゴが浮かんでいました。

「悪いなあ、エッグマン」

エッグ・グラビトンを貫通し、エッグマンの乗ったエッグモービルをも貫いた光の矢は、停止してハリネズミの姿になって振り返ると、こう言いました。

「オレ、周回遅れをハンデだって思ったことないんだ」

直後に巻き起こる大爆発。エッグモービルから膨大なエネルギーが解放され、光の咆哮をあげます。

それは地上からも視認することができたのでした。

「おのれええええ!次こそ、今度こそは、絶対にゆるさんぞおおおおお!」

いつの間にか脱出ポッドで離脱し、それに乗って視界から消えていくエッグマン。

それに合わせたかのように、ソニックのカオスエメラルドも彼の元から離れ、世界のあちこちに飛び去って行きます。

元の青いハリネズミに戻ったソニックはそのどちらも追いもせず、一度ゆっくりとまばたきをすると、それらを満足げな表情で見送りました。

7つのカオスエメラルドと1つのタマゴは、いつまたソニックに新しい冒険をもたらすのでしょう......?

さらに視線を落とすと、地上の戦闘も収まったのがわかりました

視界の端のごく遠くに、長く伸びる青い軌跡が見えます。メタルソニックがエッグマンを回収したようです。修理中の彼との因縁の再戦も、そう遠い話ではないでしょう。

早くもワクワクする気持ちがわいてきたソニックは、手足を大の字に伸ばすとゆっくり目を閉じ、落下するままにまかせてソニック達の星に落ちていきました。


「......あのさあ、ちょっとボクの助けをアテにし過ぎなんじゃない?」

落下してくるソニックを、ジェットブースター付きの赤い複葉機「トルネード号」の翼で受け止めたテイルスが、嬉しそうに苦言を呈します。

「言わなくてもわかることを、わざわざ頼むような仲でもないだろ?」

「こっちはね、ソニック達が宇宙でドンパチするもんだから、デブリのお掃除するの大変だったんだよ!たまたま重力シリンダーを改造して"デブリホイホイ"を作れたからよかったけど......」

やくたいも無い会話を楽しみながら、トルネード号は高度を落としていきました。

2人の眼下には美しい、青くて丸い星の水平線と地平線がどこまでも続いています。

ひとつの物語が終わり......また世界は青いハリネズミとたくさんのヒーローたちを、血わき肉おどる冒険の舞台を用意して悠然と待ち受けているのでした。

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キャラクター紹介

→ソニック・ザ・ヘッジホッグ
→Dr.エッグマン