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クリエーターズ インタビュー

009:大谷 智哉

「クリエイターズ インタビュー」 第9回目は、
『SONIC THE HEDGEHOG』でサウンドディレクションを担当した大谷 智哉を紹介!

プロフィール:
大谷 智哉(おおたに ともや)
セガ/クリエイティブセンター/サウンドセクション
『ソニックアドベンチャー2』(DC),『スペースチャンネル5 part2』(DC,PS2)楽曲制作
『ジャイアントエッグ ~ビリーハッチャーの大冒険~(GC)楽曲制作
『きみのためなら死ねる』『赤ちゃんはどこからくるの?』(NDS)リミックス,ラブラビッツ
『セガ スーパースターズ』(PS2),『SONIC THE HEDGEHOG』(PS3,XBox360)サウンドディレクション

作り始める前からプレッシャーでいっぱいでした

今回は、12月21日に発売されました『SONIC THE HEDGEHOG』サウンドディレクターの大谷 智哉さんにお話しを伺いたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします!

こちらこそ、よろしくお願いします!

大谷さんは、どういう経緯で『SONIC THE HEDGEHOG』サウンドディレクター になったのでしょうか?

2005年の始めぐらいに、サウンドセクションのマネージャーから 「次世代機のソニックのサウンドをまとめてみないか?」という話をもらいました。

ゲーム本編も今作は日本のチームが制作するという流れを受けて、白羽の矢が立ったのでしょう、驚きましたね。すぐに本編の制作が開始されたわけではなく、ゲームのプリプロ版や、2005年のE3に出展したソニックの次世代機デモの制作から入りました。

歴代シリーズ通して音楽のアピールが強い作品なので、当然期待は裏切れませんよね。

作り始める前からプレッシャーでいっぱいでした(笑)。

具体的にはどういったお仕事内容なのでしょうか?

サウンドディレクターといっても、その業務内容はプロジェクトや担当者によってまちまちなんですが、楽曲や効果音の制作もしつつ、サウンド全体のディレクションもします。予算の管理からスケジューリングまでプロデューサー的な役割も兼任していきます。

まずは音楽や効果音含めてサウンド全体の設計を考え、仕様をまとめていきます。その作品の中でのサウンドのアピールポイントをどこにもってくるのか、コンセプト、方向性を決め、そこから派生していくような形で全体像を形成していき、スケジュールを加味しながら全体の制作ボリュームを決めます。細かなアイデア出しなどもしていきますね。

例えば、今作では全ての効果音をサラウンドで設計しているので、ダッシュパネルに乗った瞬間、風きり音がフロントスピーカー(前方)からリアスピーカー(後方)に抜けていくとか。

ソニックが王女エリスを抱きかかえながら進むステージでは、エリスにしてみれば、もちろんソニックが多少セーブしてくれているとはいえ、あんなスピードで高いところにジャンプしたりすれば当然びっくりしますよね。

なので、ソニックジャンプのタイミングで、エリスがランダムに「きゃっ」と叫ぶとか(笑)。
どちらも実際に鳴っているものですが、これらは臨場感やダイナミズムを演出するための小ネタですね。
小ネタを考えていてアイデアが脱線していく瞬間が一番楽しいですね。

そうして仕様がある程度まとまったたら次は制作に入るわけですが、今作のように100曲近い楽曲が必要となる場合自分でも当然作曲をしますが、何人かのコンポーザーと共に制作していきます。

方向性、イメージの共有やクオリティー管理など、指示をしながらまとめていきます。例えばイベントシーンでは、「この台詞のきっかけから静かに緊張感のある感じで曲が始まり、このカットにかけて盛り上がっていってこの爆発の合間にすっと消える」といった大きな流れに関しては具体的な指示を出し、実際の曲の編成に関しては担当者にお任せにします。

当然シーンに相応しくない曲が挙がってきた場合は、リテイクも出します。その後は、予算を元にレコーディングプランをまとめ、シンガー、ミュージシャンや、スタジオの手配などを進めます。この曲はドラム、ベース、ギターを録音、この曲はストリングスやフルートをダビングするとかです。それに伴う、各種事務手続きなど、もろもろ含めてですね。

プロジェクトを進める上で、何が一番大変でしたか?

作ったサウンドデータを渡せばオッケーってものではなく、これがなかなか思い通りに鳴ってくれないものなんです。制作したデータがサウンドスタッフの手から離れてからの作業が大変でしたね、変な話ですが。

音楽や効果音がゲーム上にセットされて始めてサウンド全体の調整に入れるので、おかしな鳴り方をしている所を一つづつ潰していきます。特にサラウンドに関してなどは、PS3とXBOX360の両プラットフォームが限りなく近い鳴り方に聴こえるよう音量、定位感のバランス調整には時間をかけています。ステレオ再生時も同様ですね。

プロジェクト進行中、うれしかったことはどんなことですか?

今回はホント最後まで気の抜けないプロジェクトだったのであまりうれしさを感じる隙もなかったですが、一通りのレコーディングが終了した時はホッできたタイミングでしたね。

今回メインテーマソングはどのようなイメージで制作されたのでしょうか?

これは僕の場合ですが、特別重要な曲を作る場合は、その曲が満たすべき必要条件を箇条書きにしていきます。必要条件を挙げていくと、だんだん縛りでガチガチになっていくわけですが、同時に曲のイメージも具体的になっていきます。押えるべきポイントを確認したら、そこから先は感覚的に作っていきますね。

プロジェクト当初から、メインテーマをどのような曲調にするかずっと考えていたのですが、いくつか簡単なラフを作ってみては、誰に聞かせるでもなく却下したものもあります。光吉猛修さんに仮歌を歌ってもらった曲も作りました。歌はよかったんですが、お蔵入りってます…。

そうなんです、きちんとポイントは確認したにもかかわらず、いざ作り始めてみると、紆余曲折してしまうこともあるんですね(笑)。

最終的に”HIS WORLD”となる曲の原型を制作したのは、2006年E3用に公開した予告編映像用に制作したインストバージョンが最初です。最終的には、ラップもあり、メロディーを歌うパートもありの歌ものにするつもりで作っていたのですが、この時点ではスケジュールの都合もあり、インストで緊張感や大作感、スピード感などをシリアスに表現しつつ、サビやイントロのフレーズが印象に残せればよいと考えていました。

今回メインテーマソングではゼブラヘッドのシンガーを起用されていますが、
どういった経緯で実現したのでしょうか?

E3後に、その時点で2分くらいしかなかったテーマ曲を4、5分の構成に膨らませつつ、シンガーの手配を進めていきました。英詞の曲ということもあり、シンガーのコーディネーションや歌詞に関しては、SOAにいる瀬上に相談しつつ、交渉にあたってもらいました。ラッパーとリードヴォーカルのお二人が今回の曲にばっちりだったので、もし可能であれば、是非ともお願いしたいです!!と伝えていました。


ゼブラヘッドのAli&Matty メインテーマ収録時

レコーディングをした夏の時期は、夏フェスのSUMMER SONICやJAPAN TOURのためバンドが来日していたのですが多忙なため調整はつかず、JAPAN TOURとEUROPE TOURの合間にロサンゼルスで収録することが出来ました。

レコーディングが済むまでドキドキではありましたが、色々な方々のおかげで実現に至りとても感謝しています。

ラップとリードヴォーカルがのった音源を聴いた時にはカッコよすぎてしびれました。

今回、ソニックシリーズでは初の人間のヒロイン「王女エリス」が登場しましたね。
エリスに関する音楽を制作されるときに、何か意識されたことなどありますか?

王女エリスとソニックのストーリーに見合うような、大作感のあるバラードを作ることはプロジェクトの早い段階で決まっていました。また、その楽曲のモチーフを様々なアレンジが施しストーリー演出の軸に使用していくことも決めていました。メインテーマの”HIS WORLD”ともう一曲、王女エリスのテーマ”MY DESTINY”が今作の2大テーマとして設計しています。


王女エリスのテーマ『MY DESTINY』
を歌うDonna De Lory

”MY DESTINY”はラストエピソードのエンディングで聴く事ができる曲なんですが、必然的にアグレッシブな曲が多くなるアクションゲームの中で、それらとは対照的に、全てを包み込んでくれるような優しく繊細なバラードとして作られました。

作曲は『ジャイアントエッグ』のテーマ曲などでもお馴染みの、南波真理子が担当しています。なかなか全てのエピソードをクリアするのは難しいかもしれませんが、がんばってクリアして聴いて欲しいですね。

絶対無理!と思った方は無理せずサントラで聴いてみて下さい。

小ネタでいくと、ソレアナタウンの街角に登場するアコーディオン弾きも実はエリスのテーマのフレーズを演奏しています。
街角で出会ったら、是非立ち止まって聴いてみて下さい。


おたのしみ