西村さんは、今回初めてメインプログラマーという責任の重い立場となりました。
みんなをまとめていくうえで、何か意識していたことなどありますか?
チームの雰囲気が悪くならないようにということにはすごく気を付けていました。
会社にいる時間は、家庭で過ごす時間より長くなったりしますよね。職場の環境作りはものすごく重要だと思います。幸いひみリンチームは小川D、岸本を始め、常にポジティブシンクで明るい人たちがいっぱい。もちろんプロジェクトを進めていくうえで色々と大変なことはありましたが、チームの一人一人がとてもよくがんばってくれて、乗り越えてきました。みんな個性的で優秀な人ばかりで、チームメンバーには本当に恵まれていたと思います。
あと、夜を徹しての作業はしないように心がけていました。若い頃って、上の人が帰らないとなかなか先には帰りづらい、とかいうのってありますよね(笑)。私がいつも遅くまでいたら、周りにも悪い影響を与えるかもしれないですから。
プロジェクトの終盤やむを得ない事情で仕事がすごく遅い時間になっても、家には一度帰るようにしていました。家に帰って一度頭をリセットしたほうが次の日の仕事もはかどりますし、ちゃんと寝ないと体にもお肌にも良くないですからね(笑) 。
プロジェクト進行中、うれしかったことはどんなことですか?
まず最初は、ロサンゼルスで開催された世界最大のゲームショウ、「E3」に出展した時でした。任天堂ブースで新しいハードとソフトがズラッと並んだのを見た時はとても感動しました。その中で、ソニックのゲームと操作感がどれくらい受け入れられるか不安もあったのですが、みなさんにすごく楽しんでもらえているのを見てホッとしました。
その後も社内の人間や日本で開催されたゲームのショウなどで遊んでいただく機会があったのですが、ブンッと振ってホーミングするところでどよめきが起きたり、フライングポットのところで笑いながらWiiリモコンを振ってプレイされているのが印象的でしたね。今までもお客さんが楽しそうにプレイしている姿を見るのは嬉しかったのですが、これは今までのゲームに無い反応だな、と思いました。
もう一つは、このゲームには内部開発だけでなく、外部スタッフも大勢関わっているのですが、その部分が出来上がってくるのを見るのが楽しかったですね。特にパーティーゲームはクリマジンといった面白いキャラクターや、バイオリンなどWiiリモコンのスピーカーを効果的に使ったゲームが出てきて、普通のユーザーと同じように楽しんでました。
このゲームを通してプレイヤーのみなさんに何か伝えたいことはありますか?
新しく生まれ変わったソニックを楽しんで欲しいな、と思います。カスタマイズで最速ソニックやとにかく攻撃力が高いソニックなど、色々なソニックを生み出して欲しいです!
セガに入ったきっかけ、動機などを教えていただけますでしょうか?
5歳からエレクトーンを習っていて、大学では音響工学について学んでいましたので、音やサウンドに関する仕事がしたいな、と思っていました。それで電子楽器を作っている会社を受けようと履歴書を送ったのですが、日本の大手の楽器メーカーの多くは東京に無いのと、楽器だけを作っているわけではないので「もし受かってもあなたの希望する電子楽器開発の仕事ができるかは分からないけれどいいですか?」と説明をいただいて、悩んでしまったのです。
そんな時に、当時のエレクトーンの先生から「セガやゲームメーカーでは、サウンドプログラマーという職種で募集をしているそうよ」と教えていただきまして、先生のお知り合いでセガのサウンドクリエイターの方に話を聞いてみる?と紹介していただいたのがきっかけです。
それで、デジタルメディア制作部(以下デジメ)という、サウンド製作やら技術やら全てをひっくるめてサウンドの面倒を見る部署に配属されました。
なるほど。音楽のほうから入ってきたんですね。
セガに入って、どのようなことがやりたいと思っていましたか?
入社前の説明や社員の方のお話で、サウンドライブラリやツールといったゲーム開発者がゲームアプリケーションにサウンドを組み込みやすくする為の環境整備、要は裏方の仕事をするんだなと思っていました。あまりゲーム開発自体には興味が無かったのです。
ところが、私が入った年というのは丁度ドリームキャストが発売したすぐ後で、そういった仕事はあまり多くありませんでした。それで研究のような事を続けていたのですが、その頃デジメでは『ルーマニア#203』というゲームも作っていまして。そのメンバーから「仕事忙しくないなら手伝ってよ!」と誘われたのがゲーム開発にたずさわるキッカケでした。
『ルーマニア#203』では「サウンドコレクション」というゲームで出てきた音声やムービーなどを一挙に見られるオマケ部門を担当しました。大変でしたが、作り上げる過程が大変楽しくて、次もゲームが作りたいな、と思って希望を出してソニックチームに異動することになりました。
その後『ソニックアドベンチャー2』ではサウンドのプログラムの担当になりましたが、ここでは環境を作る仕事ではなく、今ある環境を使ってどれだけサウンド(特にSE)で効果的な演出ができるか、ということを当時のサウンド担当者と一緒に考えました。
一本作り終えて、やっぱり自分には使う人の事を事前に想定してシステムを作るよりは、ゲームを作りながら演出効果を考えるような、より具体的な仕事の方が合っているんだな、と思いました。