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SEGA-SAMMY GROUP

クリエイターズ インタビュー

027:橋本 善久

「クリエイターズ インタビュー」 第27回目は、
PlayStation3版とXbox360版『ソニック ワールドアドベンチャー』のディレクターを務められた橋本 善久(はしもと よしひさ)を紹介!

プロフィール:
橋本 善久(はしもと よしひさ)
セガ/第二CS研究開発部 第一プログラムセクション
『ソニック アドベンチャー』/コリジョンシステム、エネミー、チャオのプログラム
『ソニック アドベンチャー2』/チャオのプログラム、ゲームデザイン
『ソニック アドベンチャー2 バトル』/チャオのプログラム、ゲームデザイン
『ソニック アドベンチャー DX』/移植プログラム
『セガ スーパースターズ』/ディレクター兼プログラム
ハイエンドゲーム開発環境「ヘッジホッグエンジン」/テクニカルディレクター
『ソニック ワールドアドベンチャー』/ディレクター

「正当進化」と「大胆な変化」!

2008年12月18日にWii版、2009年2月19日にPlayStation3版、Xbox360版が発売となりました『ソニック ワールドアドベンチャー』。 今回は、PlayStation3版とXbox360版『ソニック ワールドアドベンチャー』のディレクターを務められた橋本さんにお話しを伺いたいと思います。
まず、今回のタイトルでの橋本さんの役割、お仕事内容について教えていただけますでしょうか?

はい、私は『ソニック ワールドアドベンチャー』全体の原案や基本仕様の制作及び、全機種共通パート(例えばムービー、サウンド、カットシーン、その他)のディレクション及び、PlayStation3/Xbox360版のゲーム全体のディレクションを行いました。これに加えて、「ヘッジホッグエンジン」と言う名前のPlayStation3/Xbox360用のゲーム総合開発環境の開発ディレクターも務めました。

うーん、なんだかちょっとややこしいかもしれませんね。「Wii版のゲーム部分以外のディレクションを行った」と言ったほうが分かりやすいかもしれません。

ディレクターというのは「それはOK、それはダメ」とかを判断したり、制作の進行管理をしたりするのが主な仕事です。実際にはいろんな雑用の方が多かったりもしますが。

『ソニック ワールドアドベンチャー』の構想自体は、いつぐらいからあったのでしょうか?
このタイトルを手がけることになったいきさつなどを教えていただけますか?

まず、2005年の時点で西山プロデューサーから「ソニックのゲームを作りましょう」というミッションは下っていました。ただ、その前にハイエンド機(PlayStation3とXbox360)向けの開発環境をきちんと整備しないとゲームが作れないので、ゲーム本編を作り始める前に「ヘッジホッグエンジン」というゲーム総合開発環境を数名で作り始めました。それが2005年の中盤でした。

そこから他のプロジェクトのヘルプも時折しながら1年ちょっとばかり技術的な表現の試行錯誤や開発ライブラリの整備などを行いまして、2006年の後半あたりから『ソニック ワールドアドベンチャー』のゲーム制作が徐々に始まりました。

『ソニック ワールドアドベンチャー』自体の構想は実は着手した時にほとんど考え終わっていました。元々「ソニックはこうあるべき」という考えがまとまっていたからです。特に昼のソニックパートは最初に提示した原案から全く変わっていません。当時頭の中に描いたものそのものを時間をかけて実物として出力した感じですね。

また、このゲームのタイトル名である“ソニック ワールドアドベンチャー”も原案書の段階から変わっていません。 コンセプトの中のひとつであった、“映像の表現力を生かして「1日5分の世界旅行」をしている気分になれるようなゲームを作ろう“という思想が現れたものです。

ソニック・ザ・ウェアホッグの出現は衝撃的でした!ウェアホッグ誕生秘話などを教えていただけますか?
名前の由来なども教えて下さい!

先ほど、『ソニック ワールドアドベンチャー』では最初にほぼ内容は固まっていたという話をしましたが、ウェアホッグは例外です。

当初は純粋にソニックのゲームとしてどう良く作るかという「正当進化」に焦点が主に当たっていたのですが、原案が一旦固まりかけた時に、「もう一つインパクトのある内容を入れよう」というオーダーになり、「大胆な変化」の一環としてもっとも効果のある内容を考えていったときに「よし、ソニックを変身させてしまえ!」というアイデアが出てきました。

ソニックが「足を使ってものすごく速く走る」キャラクターならば、ソニックが変身したウェアホッグの姿は「手を使ってパワフルなアクションをする」キャラクターにして対称的な存在にしてみると面白いのではないかという感じで話がまとまって行きました。

衝撃という意味ではそれなりに与えられたのではないかと思います。

ウェアホッグの名前は、最初は開発内部ではちょっと悪そうなソニックという感じで「イビルソニック(Evil Sonic)」と呼ばれていたんです。
ですが、海外ではイビルという単語が「ものすごく極悪」なイメージで捉えられてしまうようで、じゃあ名前を新しく考えようとなりました。

日本の開発や海外のセガの関係者みんなでかなり悩んだのですが、数多くの候補から最終的にセガ・オブ・アメリカのスタッフが提案した「ウェアホッグ(Werehog)」という名前に決まりました。
ウェアホッグは狼男の「Werewolf」とハリネズミの「Hedgehog」を合成した造語なんですよ。

今回のストーリーでは、チップの存在も重要なものとなっていますね。今回誕生したニューフェイス、チップに関しても誕生の由来を教えていただけますか?

そうですね、今回物語に関して「すごくシンプルに分かりやすいストーリーにしよう!」というのが一つのテーマだったのですが、シンプルなりにも話に深みや感情移入をさせ、且つゲームをナビゲートする役割も担ってもらおうということで、ソニックといつも一緒に旅をする「チップ」というキャラクターが設定されました。

ソニックというのは基本的にはクールでカッコイイキャラクターで、どちらかというとあまり感情を表に見せない性格だとは思うのですが、そのソニックの中にもしっかりと存在する「友情」や「絆」というものを、チップを通して表現できたらなという狙いがありました。

普段はボケまくりでコミカルな性格のチップではあるのですが、一緒にキャラクター設定や物語の骨子を考えたりしていた川村アートディレクターとも「今回はゲームを終えたときにホロリとさせたいね」というような目標を語っておりまして、そこに関しても良い水準で達成できたのではないかと思います。是非最後までチップとの冒険を楽しんでもらいたいですね。

チップをデザインした川村アートディレクター自身も言っておりますが、とにかくチップは「動いてナンボ」のキャラクターです。ゲーム中のカットシーン内で表情豊かに動き回る様は「かわいい!」と開発者の間でも評判で、男の開発者であってもチップファンになった者が多数です(笑)。カットシーンはチップの魅力に溢れていますから、要チェックですよ!


おたのしみ